少し厳しい内容になってしまうのですが、 企業の人事担当者さん視点で考えますと日本での就活において斡旋業者が紹介する海外インターンシップにアドバンテージはほぼありません。
これは「お金さえ払えば誰でも参加できる」のを企業側がすでに把握しているためです。
実際に企業の人事担当者さんは毎年、「同じ業者が扱う同じインターン先の同じ苦労話」を聞かされています。
特に大手代理店の教育支援系のインターンは「面倒をみる現地の子供たちが同じ」 ⇒ 企業の人事担当者さんは毎年「現地の子供たちと学生の集合写真」を見せられる ⇒ それで現地の子達の成長を親戚の子のように追えるレベルだそうです。それはまぁ、そうなりますよね・・・。
以上より就活で評価対象になる海外インターンシップは「自分で考え、行動し、獲得したもの」、もしくは「保育士やスポーツ・インストラクターなどの専門職で視野を広げるパターン」くらいしかありません。
それではこの点、もう少し掘り下げて考えてみます。
インターンシップで意味があるのは基本、同業種での経験だけです
まず第一に、日本での就活において価値があるのは同業種のインターンシップだけです。
例えば日本の貿易会社を志望している学生がニュージーランドの輸出入 / 物流業界でインターンするのは意味がありますが、老人ホームでのインターンは「短期の社会経験」といった基礎的な評価にとどまります。
結局のところインターンは目的ではなく手段ですので「海外でインターンをしたい」というのがそもそもNG、原則としてインターンは「この業界で就職したいので、就活前に職業体験しておきたい」という方向で考える必要があります。
企業の人事担当者さん視点で考える有料のインターンシップ・プログラム
話は戻りますが、業者が紹介する有料インターンシップのほとんどは「与えられるプロジェクト」と「目標達成までのストーリー」が決まっています。
例えば留学エージェントの業務に参加する1か月のインターンですと「顧客管理と対面サポートを任される」 ⇒ 「最初は分からないことばかり」 ⇒ 「でも2~3週でコミュ力の大切さが分かった」 ⇒ 「英語力だけでなく日本語力も重要だと気付いた」 ⇒ 「あれこれあって」 ⇒ 「最終的に自信がついた!」というあらすじがあり、ここに幾つか失敗談が加わることでストーリーが完成します。
また教育支援系のインターンですと「現地の子供達と折り紙やけん玉で遊んだり、算数や日本語を工夫して教える」 ⇒ 「いろいろあって」 ⇒ 「精神的に成長した!」という流れです。
その後は「現地の経験を通して経済や政治や教育の重要性を実感」したり、「参加している学生同士で意見が衝突する中でリーダーシップを学んだ」結果、日本帰国までに「人間的に大きく成長します」。
・・・と、あえて挑発的な書き方をしましたが、結局のところ有料の参加型海外インターンシップは参加型のドラマです。
お金を払うことで「決められた期間内」に「予め用意された苦労」を経験し「人間的に成長する」という参加型アクティビティですので、誰がやっても似たようなストーリーにしかなりません。
そして身も蓋もない話ですが、これらは職業体験という面からすると日本国内のアルバイトでも十分に達成できる内容です。わざわざニュージーランドや海外に出る理由がありません。
そういった観点から現状、業者紹介系の海外インターンを評価する人事担当者さんはほぼ居らっしゃいません。大抵は「パッケージツアーで海外に行った」のと同じ程度の評価になります。
以上より自らポジションを勝ち取ったインターンでない限り、日本での就活において海外インターンはアドバンテージにはなりません。
正直、参加型プログラムにお金と時間を使うくらいなら語学や資格取得に注力する方がベターです。実際にIELTSや専門資格取得の方が、簡単&正確に評価を得られます。
- 業者が紹介する有料インターンのほとんどはただの参加型アクティビティである点、すでに企業側は把握しています
- 人事担当者さんは海外・国内に関係なく、インターンで得られた気づきや経験を重視します
- だからこそ「海外に出た理由」はかなり重要です
- それを踏まえつつ、インターン先と業種が一致しているかどうかも大切なポイントです
海外インターンシップ経験者に聞いた、日本企業での一般的な質問
過去にニュージーランドでインターンシップを経験された方にお聞きすると、だいたいどの会社でも面接時に以下のような質問をされています。
- どのような目標・理由があって、ニュージーランド行きを決めたのですか?
- なぜ海外なのですか?その体験は日本ではできなかったのですか?
- その職はご自身で交渉して得たのですか?それとも業者の紹介ですか?
- その職場では具体的に何をされましたか?
- 就労期間は何か月ですか?
- そのインターンで何が身に付きましたか?
こうやって並べてみると分かりますが、インターンシップにおいて「海外」というのは付属的な要素です。あくまで「体験したいこと / 自分の気持ち」が先にあり、「それが叶う環境が海外にあった」という流れでないと、就活でアドバンテージを得るのは難しい状況です。
海外インターンシップ、就活面接で高評価を得るために
これまで弊社をご利用になったお客さまを見てきた経験から言いますと、就活で成功されているのは「現地での就労やインターンシップに対して能動的・戦略的に行動された方」がほとんどです。
つまり「狙っている職種や現地企業での就労経験を得るために留学やワーホリという制度をどのように利用し、どのような計画を立てたのか。そして実際にはどういった問題が発生し、それにどう対処したのか」という流れをレポートにまとめて、30分のプレゼンができるくらいに仕上げているタイプの方が成功されています。
そして正直、この流れで頑張れるのなら海外にこだわらなくても全然OKです。
結局のところ企業の人事担当者さんが見ているのは「海外」や「インターンの成功」ではなく、「何故それを選んだのか。またそこでどのような経験をしたのか」という点だからです。
更に言ってしまえばインターンは成長したかどうかすら重要視されません。
「インターンに成長を求める企業」=「入社後の教育プログラムが弱い企業」です。まともな会社の人事担当者さんは「伸びしろ」や「採用した後にどう成長するか」という点しか見ていません。
正直、半年のインターンと入社後1か月の成長の幅は同じです。たとえば外資・貿易系なら「英語で電話応対ができる、窓口対応ができる」というのは業務として初歩レベル、半年のインターンでこれができたところで成長とは捉えられません。
ほぼ全てに失敗していても高評価を得られるケース
ここで一つ例を出してみます。
たとえば「自力で海外のインターン先をゲットしようとしてネットで検索、コレをして、アレをして、このリストにある会社に応募して、こういう工夫をした。こんな人からこういったアドバイスを貰って、こんな改善もした。それでもどこにも雇って貰えなかった。ダメだった。その後、現地に飛んでアポなし会社訪問を1か月間毎日チャレンジした。でもダメだった。海外の壁は想像以上に厳しかった」という失敗談があった場合、これは高く評価されます。
この人は何も達成していませんしスキルも得ていません。そもそも働いてすらいませんし、成功もしていません。人間的に成長したかどうかも怪しいものです・・・が、それでも評価に値するポイントが幾つもあります。
そしてこれと比較すると「業者によって設計された有料プログラムに参加することで成長した人間性」は、アピールとして魅力に欠けているのがよく分かります。
改めて、企業側は成長したかどうかに重点を置いていないのです。
現地の学校や業者が提供する海外インターンシップ
それでも一応、業者が紹介するタイプの海外インターンの実情を整理しておきます。
まず第一に、業者が提供するインターンには給料が出るパターンと出ないパターンがあります。
そして給料が出ないパターンは過去に世界中の斡旋業者が現地の労働法違反で訴えられるなどのトラブル ⇒ 現在は全世界的に下火です。
・・・が、それでも名目をボランティアに切り替えるなどで、国によっては今でも無給型インターンが続けられています。
ニュージーランドでは無給型インターン、ほぼ見掛けなくなりました
労働提供者の国籍や所持しているビザの種類に関係なく、ニュージーランドでは誰かを無償で働かせるのは労働法違反、犯罪です。それで現在、ニュージーランド国内に無償インターンの取り扱い業者はほぼ居ない状況です。
「無給」ではなく「無償」がNGです。たとえば「給料は出さないが、労働の対価として住居と食事を提供する仕事」は労働法的に問題ありません。あとは移民法さえクリアーしていればOKです。
それを踏まえつつ、ボランティア = 無償の奉仕は労働法的に問題ありません。
移民局なり裁判所なりが「これはインターンではなくボランティアだ」と認定するのなら、植樹や介護や動物愛護関連など誰でも自由に参加できます。ビザも観光ビザで十分です。
しかし「ビジネスの場における無償のボランティア」として裁判所で認められるためには、「そのビジネスに直接的もしくは間接的に利益をもたらすタスクを一切実行せず、また組織内で核心的なポジションにもいない」といった客観的事実が必要になるそうです。
個人的にはその縛りでどういったケースが「企業内のボランティア」として認められるのかが分かりませんが、法律的にはそう決まっているようです。
もしかすると「休憩ルームでギターを弾いてスタッフを楽しませる」なんかはボランティアになるかもしれません。
しかし当然ですがオフィスの掃除や電話応対などは労働ですので、これを無償でする / させることは労働法違反の可能性が高いです。
以上より「代理店やエージェントが不特定多数に合法的に無償インターン先を紹介する」というの、絶対に無理とまでは言いませんが、簡単なことではありません。
もしも無償のインターン・プログラムのご利用をお考えの場合は思わぬ違法行為に巻き込まれないよう、十分に注意しなければなりません。
訪問者ビザではインターンを含む一切の就労が認められていません
それからもう一点、インターンとボランティアにはビザの問題が付きまといます。
まず第一に、ニュージーランドでは訪問者ビザ(いわゆる観光ビザ)での就労はできません。ですから業者がボランティアと称していても、また業者自身が本心から適法だと考えていたとしても、それが就労であれば「働いた本人」が移民法違反で逮捕されます。
本当はインターンの予定があるのに入国審査で「就労する気は一切ない」と宣誓 ⇒ ビザ無し入国するのがそもそもNGです。疑いがある部分は詳細を申告して、入国できるかどうかを入国審査官に判断して貰わなければなりません。
ちなみに無給であっても農作物の現物支給や宿泊施設 / 食事などの提供、つまり有償の労働であれば就労の可能性が高いです。
実際に住み込みのベビーシッターは無給であっても就労ビザが発給されますので、活動の対価に住居や食事の提供、物品やサービスの提供がある場合は就労とみなされる可能性が高いです。
とにかく賃金が発生していなくても、有償であれば就労の可能性が高いです。
さらに、たとえ労働者は無償の活動をしているつもりでも裏で誰かしらから仲介業者に報酬が支払われ、かつ、プログラム参加者が仲介業者からなんらかのサービスを受ける場合には、違法就労の疑いが残ります。
具体的には「職場からはお金も物品も受け取っていないけど、仲介業者が提供している10万円のサービスを5万円にして貰った」というパターンが、これにあたります。
いずれにせよ業者に騙された場合でも違法就労の罪に問われるのはプログラム参加者自身ですので、疑問に思う場合は事前に移民局に相談しておく必要があります。
ニュージーランド政府は不法就労や労働者の搾取にとても厳しく、匿名の通報窓口を設置して市民の協力を募っています。このページから移民局や警察宛てに、誰でも・いつでも相談や通報ができます。
- 無償の就労は特殊なパターン以外、ほぼほぼ違法です
- 無給であっても就労とみなされるケースがあります
- 斡旋業者自体が違法状態に気づいていない可能性があります
- 訪問者ビザ(ビザ無しでの渡航)で就労するのは違法です
- 違法就労専用の通報窓口があり、通報を基に警察や移民局が随時捜査しています
ニュージーランドで不法就労で通報されるとどうなるのか
たとえば訪問者ビザで怪しげなインターン・プログラムに参加 ⇒ NZ市民からの匿名通報 ⇒ 裁判所でそれが就労だと認定されれば、不法就労で起訴されます。
そして起訴状通りに判決が下された場合、通常は犯罪者としてデータ登録 & 国外退去命令が出されます。
そして国外退去や強制送還になった場合、その履歴は日本、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど、主要な先進国間で半永久的に情報共有されると言われています。
ですから強制送還後はニュージーランド以外の国へのビザ申請でも不法就労の事実を申告しなければならず、将来の海外旅行にまで悪影響が残ります。
繰り返しになりますが訪問者ビザでの就労は違法ですし、一見ボランティアのような活動も就労とみなされる可能性があります。
この点は以下の「就労とボランティアの違いを判断するのは賃金の有り無しではない」旨と合わせ、十分にご注意ください。
人材派遣業者や留学エージェントなどによる有給インターンの紹介
さて無給のインターンはかなり難しいというの、大体わかりました。
それを受けて次に有給インターンについてですが、つまるところこれは通常のアルバイトです。ただその呼び方がちょっとカッコイイだけのことです。
ちなみに業者が手掛けるメジャーな斡旋先はホテルの裏方業務、清掃業、倉庫内の軽作業、レストランの厨房関係、ベビーシッター、日系の旅行代理店の空港お迎えスタッフ、そして留学エージェントのスタッフといった所です。
留学エージェントは代表的なインターン先です。ちなみに留学エージェント自身が有料インターンプログラムを企画 ⇒ 参加者はそのエージェントの現地オフィスで働くという、なんだか無限錬金術的なものすごいパターンもあったりします。海外ってすごいです。
有給インターンでもIRD番号が必要です
どのような名目であっても賃金が発生するのならば、IRDナンバーが必要です。
ちなみにIRDナンバーは申請から発給まで1~3週間程度かかりますので、現地に到着してすぐには働けません。
IRD番号の申請方法は以下をご確認ください。
紹介業者を通しても、英語力に見合った仕事しか紹介されません
たとえば英検2級レベルの方に現地オフィスの事務仕事は回ってきませんし、英検準1級レベルの方でも企画や営業の仕事はまず回ってきません。
つまり斡旋業者を通すことで、就職する際の英語力の問題が解決することはありません。
むしろ斡旋業者だからこそ、英語を話せない方に英語環境の仕事を紹介したりしません。
そんなことをしても企業、業者、プログラム参加者の全員が困るだけですしね・・・。
そんなわけで現地企業で働くには、最低でも現地企業に自力で入れるくらいの英語力が必要です。海外での就職ですので、語学力は避けて通れません。
結局、インターン先 / 就職先は自分で探さなくてはなりません
結論として、インターン先は自分で探す必要があります。
また基本的にはインターンではなく、まずは就職で考えるのが一般的です。
その場合、まず大前提として、「日本で就職を考えている業界」で探します。それ以外の業種でインターンをしても評価は期待できません。
また海外ということのアドバンテージは、終活においてそれほど重要ではありません。
もしも海外での職業体験にアドバンテージがあるのなら、ワーホリ経験者さん達は日本の就活で無双しています。しかし現実はそうではありません。
全ての重要ポイントは「そこで何をしたのか?」という点に集約されます。
日本企業の人事担当者さんが見ているのは「海外」でも「インターンの成功」でもなく、「あなた自身」です。
身も蓋もない話ですが、もしも分かりやすく自分自身を表現したいのなら「語学力や資格の取得」の方が適切&簡単に評価して貰えます。
以上より海外インターンシップは「どうしてもやりたいこと」、「日本ではその希望が叶えられない」という2点を最低限クリアーしつつ、できれば「なぜニュージーランドなのか?」といった地域に関する説得力のある説明を準備する必要があります。
その他、インターンをするには基本、ワーホリビザが必須です。
訪問者ビザ(いわゆるビザ無し渡航 / 観光ビザ)でのインターンは高確率で違法であり、ボランティアという名目であっても事前に移民局に問い合わせるなどの自己防衛が必要です。
そして最後に、ニュージーランドではインターンをするより就職する方が簡単です。
NZの企業は無給で人を働かせることができませんので、リスクマネジメント的にもインターンではなくアルバイトを募集するのが普通なのです。
またこの状況はアメリカやオーストラリアなど、諸外国も同じです。
ですから「海外での就職活動を避けるためにインターンを」というのは、間違ったアプローチということになります。
とりあえず「日本での就活で企業が求めていることを考え、想定し、それに対応して動いている留学生 / ワーキングホリデーメイカーは」それほど多くありません。
逆に言えばそこが日本での就活の狙い目ですので、一つ一つ戦略を立てていくのが成功の第一歩です。