ニュージーランド国内での所得には例外なく所得税が掛かります。
そして通常、所得税は会社によって多めに源泉徴収(天引き)されていますので、年末調整をした際に過払い分が返ってきます。
つまりタックスリターンとは年末調整のことであり、それで税務署からの返金があるのです。
厳密には年末調整とは違うのですが大筋、その認識で間違いありません。また源泉徴収の調整ですので原理的にはマイナス調整 = 追加で税金を支払うことになる可能性もあります・・・が、通常の会社で一般的なお仕事をしているのならばマイナス調整になることはまずありません。
NZのタックスリターンは既に自動化されています
そして現在タックスリターンは自動化されていて、政府が自動的に計算 ⇒ 登録されたNZ国内および国外の銀行口座に勝手に還付しています。
つまり現状、タックスリターンは何もする必要がないのです。
この点はIRDのサイトで詳細が案内されています。
しかしそれでも日本帰国時にはIRDのオフィスに直接行って、日本に帰国する旨を伝えておくと間違いがありません。
オフィスでの申請であれば間違いもなく、その場でIRD番号も末梢できます。
それでは以下、タックスリターンについて掘り下げて考えてみます。
IRD関係はすべて自動化されていますので、受け取り銀行の口座登録さえしっかりしているのならば、大筋で問題はありません。過払いした税があれば最長で2年くらいかけて計算 & 返金されます。ちなみに受け取り先の口座に日本の銀行口座を指定できます。この点は後述します。
ニュージーランドのTax Return (タックスリターン)の概要
Tax Return (タックスリターン)とは、日本の会社でいう年末調整です。
ニュージーランドでIRD登録(税務登録)をされた方は毎年、「それまでに支払った税金」と「納税しなければならない額」の差額の調整が行われます。
それを踏まえつつ、ニュージーランドから日本に完全帰国する場合はIRD登録を抹消(※注) ⇒ NZ滞在中の納税額を確定 ⇒ 定期的なタックスリターンの前に、納税額の過不足を清算するよう求められます。
以上よりワーホリなどの短期滞在者のタックスリターン(Tax Return)とは、「帰国前の税金整理」といった意味合いになります。
※注 IRDのシステム的には「IRDナンバーの抹消」ではなく「長期の休眠」という手続きです・・・が、話がややこしくなりますのでここでは抹消という表現を使います。実際に運用的にも抹消と考えて差し支えありません。
ニュージーランドの所得税率
ニュージーランドの所得税の税率は累進・スライド方式で、具体的には0~14000ドルまでが10.5%、14001~48000ドルまでは17.5%と決められています。
各企業はこれを基に源泉徴収をしていますが、従業員が複数の会社で働く場合もありますので、「最終的に社員が1年で幾ら稼ぐのか」を事前に把握できません。それで通常は12~20%程度の範囲でざっくりと源泉徴収しています。
源泉徴収の割合 / 税額は給料明細をご確認ください。所得税は「TAX」や「PAYE」などと書かれることが多いです。ちなみに収入が多いと税率が高くなる ⇒ 毎月ちょっとずつ税率が変わっていたりもします。
NZのTax Return (タックスリターン)で戻ってくる金額の目安
以上より税込み所得が14000ドル以下/年度であれば還付金が戻る可能性が高いです。また実際に幾ら戻るのかは各事業者の源泉徴収の割合次第ですので、一般的な目安はありません。
それでも税込みで2000ドル/月の収入の場合であれば15%程度の源泉徴収が多く、6か月で12000ドル程度の収入だった場合は550~600ドル程度の過払い ⇒ タックスリターンで還付になることが多いです。
また14000ドルの壁を越えて8か月程度で25000ドル稼いだ場合は多めに源泉徴収 ⇒ 350~400ドルくらいの還付になることが多いです。
いずれにせよTax Return (タックスリターン)で既納額の全てが戻るわけではありません。戻ってくるのはあくまで過払い分のみである旨、ご注意ください。
ニュージーランドの会計年度は04月01日から03月31日までです。ですから12月から03月までに1万ドル、04月から11月までに1万ドル稼いだ場合、この2万ドルに対する所得税は最低税率の10.5%になります。
NZのTax Return (タックスリターン)、返金額のサンプルと参考例
例えば週5日のフルタイムで3か月働いた際の給料明細が以下だった場合、平均的な会社であれば源泉徴収で15% = 1560ドルを先払い納税しています。
- 総支給額 : 時給20.0ドル@8時間@週5日@13週 = 10400ドル
- 源泉徴収額 : 1560ドル(会社が税率15%で適当に徴収)
- 手取り総額 : 8840ドル
この状態でTax Return (タックスリターン)申請をしますと正確な税額は「10400ドル@10.5% = 1092ドル」ですので、過払い分の468ドルが返ってきます。つまり手取りの合計は「会社からお給料で8840ドル+IRDからタックスリターンで468ドルの還付=9308ドル」になります。
また全く同じ総支給額でも会社の源泉徴収率が11%だった場合、既納額は1144ドル ⇒ 還付額は52ドルになります。
- 総支給額 : 時給20.0ドル@8時間@週5日@13週 = 10400ドル
- 源泉徴収額 : 1144ドル(会社が税率11%で適当に徴収)
- 手取り総額 : 9256ドル
この場合の手取りの合計は「会社から9256ドル+IRDからタックスリターンで52ドルの還付=9308ドル」、つまりどちらのパターンであっても「10400ドルの収入に対し1092ドルの所得税を支払っている」公平な状態になります。
NZのTax Return (タックスリターン)、返金額の計算式
結論として、「給料明細に記載された所得税の合計」-「14000ドルまでの収入は10.5%、それ以上は17.5%の所得税」=「タックスリターンで返ってくる金額」です(年収48000ドル以下の場合)。
ただし実際にはACCの徴収金や銀行利息への税が絡むなど、細かな違いが出てきます。
また最近は毎月の給料額に合わせてかなり正確な源泉徴収を行う会社も多く、一昔前に比べて返金額は小さくなってきています。
オンラインでニュージーランドのTax Return (タックスリターン)をする方法
具体的に Tax Return (タックスリターン)は「IR3」という書類の提出で申告します。オンラインでも以下のページから申請できます。
IR3の申告手続きは紙ベース、オンライン、IRD支局の窓口で、そして前述の通り「政府が定期的に自動で」手続きをしています。
しかしワーホリを終えて日本に帰国する場合、可能な限りIRD支局の窓口で手続きをしておくのをおすすめします。通常、15分くらいで手続きは終わります。
税金ですのでいろいろな考え方がありますが、基本的にはIRD窓口で日本に帰る旨を申請 ⇒ IRD番号も抹消して綺麗さっぱり & 後腐れなく日本に帰るのがベストです。
IRDのオフィスで手続きをしなかった場合
IRDのオフィスでNZを出国する旨を申告しなかった場合でも、最終的にはオンラインで日本に帰国した旨を申告することになります。
また帰国してから2~3年後にIRDから「なんで去年の税務申告をしてないの?とりあえず無申告に対する罰金を請求しますね。あとすぐに確定申告してくださいね」という内容の手紙やメールが届く場合もあります。
IRDの申請先オフィス
クライストチャーチですと病院の近く、CBDの少し外れになります。
オークランドですと、Takapuna が一番近いオフィスです。シティ中心部にはオフィスがありません。
ちなみにお近くのIRDオフィスの住所は通常の検索では中々に出てきませんので、google mapで「ird + 地域名」で調べます。たとえば Nelson であれば、こんな感じです。
ニュージーランドのタックスリターン申請とIRD番号の破棄に必要な書類
通常のパターンであれば、タックスリターンとIRD番号の破棄に必要な書類は以下になります。
- パスポート
- ビザ
- ニュージーランドを出国する航空チケット
- IRD番号
- 振込先の銀行口座詳細(NZ or 日本)
- お持ちであれば、給料明細の控え
手続きに際してIRD「カード」は必要ありませんが、申請書にIRD番号を記入する欄があります。IRD「番号」の確認は以下のページをご参照下さい。
「myIR」に登録していない場合はIRDに問い合わせる必要があります。それも含みでIRD番号を忘れている場合は、その他の必要書類を持ってオフィスに出向くのがベストです。
タックスリターンの還付金の受け取り方
ニュージーランドの銀行口座を指定していれば、通常は1~4週で振り込みがあります。
ですから3か月後にはNZを離れるというパターンであれば早々にタックスリターン ⇒ IRD番号も停止 ⇒ 返金も受け取ってクリーンな状態で日本に戻れます。
何も手続きをしなかった場合、還付金はIRD番号を作った際に登録した銀行口座に振り込まれます。
デビッドカードを作っておく
またNZの銀行を閉じずに残しておくのなら、デビッドカードを作成 ⇒ 日本帰国後にクレジットカードのように残高を使えます。
ただしデビッドカードは10ドル/年の維持費がかかり、また日本帰国後にオンラインで銀行口座を閉じることになりますので、どうしても面倒が残ります(オンラインでの銀行口座の閉じ方は以下のページをご確認ください)。
Wiseを利用する
ニュージーランドでTransferWiseの口座を作る、もしくは日本で作った口座の住所をニュージーランド国内に変更した場合、年会費無料のデビッドカードを作れます。
またNZドルをメイン通貨にすればIRDからの送金先を Wise(旧TransferWise)の銀行口座にすることもできますので、ニュージーランドの銀行口座を残すくらいなら、Wise を利用する方がベターです。
IRDの銀行振込先を、日本国内の銀行に変える方法
以上の幾つかの選択肢を吟味しますと、基本的にはNZ滞在中にIRDのオフィスで日本に帰国する旨を申告 ⇒ NZの銀行口座で返金を受け ⇒ NZ出国前に銀行口座を閉じるのがベストです。なんだかんだ、これが一番ラクな手続きです。
しかしそれが出来ない場合、Tax Return (タックスリターン)の還付金を日本の銀行口座で受け取るのが良さそうです。
たとえばNZ出国ギリギリまで現地でのアルバイトが入っている場合などは以下の手順でIRDの銀行振り込み先を日本の銀行に変更 ⇒ 日本の銀行で還付金を受け取る流れが第一の選択肢です。
まずは以下からIRDにログインします。
myIR に登録してない場合は Realme からログインします。Realme も登録してない場合は、Realme から登録してください。
まずは住所を日本に変更します。Physical address をクリックします。
国名をJAPANにして、日本のご実家の住所などを記入します。
戻って次は Manage Refund bank Accounts をクリックします。
新規で日本の銀行口座を追加します。
国名でJapanを選択国名でJapanを選び、SWIFTコードと口座番号、口座名義人名を正しく記入します。ちなみにSWIFTコードは通常、日本の銀行の公式サイトに記載があります。
更新すると日本の銀行口座が追加されています。その新口座をクリックして次に進みます。
日本の銀行口座に返金先を紐付けます。通常であれば Income Tax だけが表示されますが、以下のように複数の Account type が表示される場合は全てチェックしておきます。
これでIRDからの返金は、全て日本の銀行口座に変わりました。後は自動的に毎年のタックスリターンが行われ、還付金があればここに返金されます。
NZの税金関係の通知書は日本にも届きます
日本に帰った後、ニュージーランドでなんらかの税務トラブルや申告漏れがあった場合などには、IRDから日本の住所に違反金や追徴の請求書が届くことがあります。
ですからニュージーランドに居る間にIRDのオフィスに出向き、確実にIRD番号を抹消しておく必要があります。
IRDから手紙や税金の督促状が届いた場合、まずはIRDのウェブサイトでID登録 ⇒ 「correspondence」からIRDにメール ⇒ 既に日本に帰国している点、もうニュージーランドには住んでいない点、ニュージーランド国内での収入が無い旨点、そしてIRD番号を抹消したい旨を告げる必要があります。そうすることで違反金の支払いが免除になるケースも多いです。
いずれにせよ日本に連絡が届いた場合、まずはIRDに連絡をして詳しい状況をご確認下さい。
税務は全て個別ケースとなりますので、弊社では本ページに記載されている以上のお手伝いやインフォができません。トラブルがあった際にはIRDに直接、もしくは資格を持った会計事務所にご相談下さい。
よくあるご質問
Q.タックスリターンとは具体的になんなのですか?
A.毎年の年末調整のようなものです。ワーホリや学生であれば「日本帰国前にIRD番号を破棄するための手続き」という認識で大筋、間違いありません。
Q.ニュージーランドのタックスリターンは自動化されているのですか?
A.自動化されています。かなり時間はかかりますが、政府が計算をして指定された銀行口座に返金しています。
Q.具体的に何かをする必要がありますか?
A.政府の自動計算には1年以上かかることがありますので、帰国前にIRDナンバーを破棄および清算するのが一般的です。
Q.タックスリターンで幾らくらい戻りますか?
A.ケースによりますが月収2000ドルで半年働いた場合、550~600ドル程度の還付になる事が多いです。
Q.タックスリターンの還付金を日本で受け取れますか?
A.このページでご紹介した方法で口座を指定することにより、日本の銀行で還付金を受け取れます。